IEEPA関税に最高裁が違憲判決:還付申請と7月24日期限を解説
Ekaterina Rubtcova
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Subscribe Now2025年春から2026年2月までの間に米国へ商品を輸入していたなら、米国政府があなたにお金を返す可能性があります。仮定の話ではありません。米国税関・国境警備局(CBP)はすでに約230億ドルの還付を承認済みで、さらに数百億ドル分を処理中です。
何が起きたのか、日本のセラーが今まさに国境で支払っている税率はいくらなのか、そして7月に控える期限を整理します。
要点
- 2026年2月20日、米連邦最高裁は Learning Resources v. Trump で6対3の判決を下し、「IEEPA(国際緊急経済権限法)は関税を課す権限を大統領に与えていない」と判断しました。IEEPAに基づくすべての関税は2月24日をもって失効しています。
- 2025年7月の日米合意(対日15%関税+5,500億ドル投資枠)は、法的根拠がIEEPAだったため判決とともに崩れました。現在、日本からの対米輸出には10%のグローバル追加関税(通商法122条)+通常のMFN税率のみが適用されています。つまり今は交渉で決まった15%より安い状態です。
- CBPはACEポータル内の「CAPE」という手続きで約1,660億ドル分のIEEPA関税を還付中です。還付は**輸入者(Importer of Record)**に支払われます。DDP条件で出荷していた場合、通関上の輸入者はフォワーダーやサプライヤーです。
- 置き換えとして導入された10%の追加関税(122条)は法律上150日が上限で、2026年7月24日に失効します。その後の税率は現時点で誰にも分かりません。
- 中国から仕入れて米国で販売しているセラーへの影響:通商法301条の25%は判決の対象外でそのまま残り、現在の実効税率は約35%(10%+25%)。2025年の45〜55%からは大幅に下がりました。デミニミス(800ドル免税)は復活しません。
最高裁は何を決めたのか
判決が出たのは2026年2月20日、事件名は Learning Resources, Inc. v. Trump。ロバーツ長官が多数意見を書き、6対3で結論が出ました。争点は、1977年制定のIEEPAが大統領に関税を課す権限を与えているかどうか。「解放の日」と呼ばれた相互関税も、フェンタニル関税も、すべてこの法律が根拠でした。
最高裁の答えはノーです。IEEPAが認めるのは緊急時に輸入を「規制(regulate)」することであって、課税権は憲法上議会にあり、これほど大きな権限移譲は明文でなければ認められない、という判断でした。
判決から4日後の2月24日、IEEPAを根拠とするすべての関税が失効しました。これは税率の引き下げではありません。約1,660億ドルの関税が法的権限なしに徴収されていたという司法判断です。だからこそ還付の仕組みが動いています。
日本のセラーへの影響:15%合意は宙に浮いた
ここが日本の輸出セラーにとって一番大きなポイントです。
2025年7月の日米合意を覚えているでしょうか。日本製品の大半に15%の関税を適用する代わりに、日本側が5,500億ドルの対米投資枠を約束するという内容でした。あの合意の関税部分は、IEEPAに基づく相互関税の枠組みの上に作られていました。つまり、法的な土台ごと今回の判決で消えたのです。
現在、日本から米国への輸出品に適用されるのは、他のすべての国と同じ「10%のグローバル追加関税(通商法122条)+商品ごとの通常MFN税率」だけです。皮肉なことに、日本製品は交渉でまとめた15%よりも低い税率で米国に入っている状態です。
2026年3月にトランプ大統領と高市首相は合意を実施する意向をあらためて確認しましたが、どの法律を根拠に15%を復活させるのかは今も不透明です。なお、自動車や鉄鋼・アルミに課されている232条関税は別の法律に基づくもので、今回の判決の影響を受けません。
対米輸出をしているなら、この「一時的に安い」窓は計画に織り込む価値があります。ただし賞味期限があります。それが次の話です。
還付:誰が、どうやって受け取るのか
CBPはACEポータル内に「CAPE(Customs Adjustment and Processing of Entries)」という専用手続きを作りました。3つのフェーズに分かれています。
- フェーズ1 — 4月20日から稼働中。 未清算(unliquidated)のエントリーと、清算から80日以内のエントリーが対象。2025〜2026年の輸入の大半はここに入ります。CBPはこれまでに約900億ドル分の申請を受理し、約230億ドルの支払いを承認しました。還付には利息が付きます。
- フェーズ2 — 6月29日開始。 リコンシリエーション対象のエントリー、約280万件・推定287億ドル分。
- フェーズ3 — 7月下旬予定。 清算が確定した古いエントリーが対象ですが、注意点があります。政府の説明では、フェーズ3の還付は国際貿易裁判所(CIT)に提訴した輸入者のみが対象です。
有効な申請は、CBPがCAPE申告を受理してからおおむね60〜90日で支払われています。
「輸入者は誰か」がすべてを分ける
このニュースがあなたにとって数千ドルの話になるか、ゼロになるかは、この一点で決まります。
還付は**輸入者(Importer of Record、IOR)**に支払われます。自社(自分の法人)名義で通関し、自前のカスタムズボンドを持っているなら、あなたかあなたの通関業者がCAPE申告を出せば、お金はあなたに戻ってきます。
一方、DDP(関税込み持ち込み渡し)で出荷していた場合、通関上の輸入者はほぼ確実にフォワーダーかサプライヤーです。関税を納めたのは彼らなので、還付を受け取る権利も彼らにあります。しかし実際には、その関税はDDP見積もりの中であなたが負担していたはずです。今週中にフォワーダーへ書面で問い合わせてください。「自社の貨物が載っていたエントリーについてCAPE申請をするのか、回収分をどう還元するのか」。自発的に教えてくれる業者は多くありません。
自社がIORの場合の手順です。
- 2025年4月〜2026年2月23日の全出荷分について、Form 7501(輸入申告サマリー)を取り寄せる。
- IEEPA関連のHTSコードで課税された行を合計する(通関業者なら数分で抽出できます)。
- 通関業者にACEでのCAPE申告を依頼する(自己申告している場合は自分で提出)。
- 90日後にフォローアップの予定を入れておく。
中国仕入れ組:実効税率は約35%に低下
中国で仕入れて米国Amazonで販売している日本のセラーにも、はっきりした変化があります。
- 10% 122条グローバル追加関税
- 25% 301条関税(今回の判決とは別の法律で、無傷のまま残っています)
- 商品カテゴリーごとの通常MFN税率
合計すると、中国仕入れの消費財の多くは約35%+MFN。2025年に多くのセラーが払っていた45〜55%からは大きな改善です。2025年に「関税で利益が消えるから」と棚上げした商品があるなら、計算をやり直す価値があります。仕入れ原価と関税を含めた損益の組み立て方はAmazon FBA初期費用の内訳で解説したフレームがそのまま使えます。
一方で、デミニミス(800ドル以下の免税枠)は戻りません。 2025年に廃止された後、CBPは2026年6月23日に、最高裁判決の影響を受けない1930年関税法を根拠として停止を恒久化する規則案を公表しました。中国直送の小口貨物が再び安くなる前提で2026年の戦略を組むのはやめておきましょう。
7月24日の崖
122条には法律上の絶対的な上限があります。150日。延長できるのは議会だけです。10%の追加関税は2026年7月24日に失効します。
その日を境に関税が静かに消えるとは、まともな関係者は誰も考えていません。政権は追加関税を法定上限の15%へ引き上げる案を示唆し、6月には約60か国を対象とする新たな301条措置を提案し、232条の品目別関税も拡大中です。
実務的に言えば、8月15日に米国へ着くコンテナの関税率は、今日の時点では誰にも分からないということです。0%+301条かもしれないし、15%+301条かもしれないし、国別の新税率かもしれません。
弁護士ではなく運営者としての私の判断はこうです。リオーダーの意思決定が控えているなら、7月24日より前に通関を終えることだけが、着地コストを確定できる唯一のシナリオです。それ以降は推測になります。私なら、未知の税率にリオーダーを賭けるより、確定コストで6週間分多めに在庫を持つ方を選びます。ただし、この判断は保管手数料と突き合わせてから真似してください。
今週やることリスト
- 2025〜2026年の全出荷について、IORが誰だったかを確認する。 自社名義ならCAPE申請へ。DDPなら今日フォワーダーにメールを。
- 還付額を先に見積もる。 支払った関税×IEEPA税率の期間は、思っている以上に積み上がります。20万ドルの輸入に20%のIEEPA関税なら、これは4万ドルの話です。
- 中国仕入れ商品の着地コストを35%で再計算する。 2025年のパニック時の税率のままの損益計算書を使い続けないこと。棚上げした商品候補の掘り起こしにはAmazon商品リサーチの方法が使えます。
- 可能なら入荷を7月24日前後で調整する。 期限前はコスト確定、期限後は未知数です。
- 日本からの直接輸出組は「10%の窓」を認識しておく。 15%合意が別の法的枠組みで復活するまでの間、対米輸出のコストは交渉結果より低い水準にあります。
まとめ
この3年間、関税の話は上がる一方でした。今回が初めての構造的な巻き戻しです。最高裁は税率をいじったのではなく、ホワイトハウスから関税という道具そのものを一つ、恒久的に取り上げました。注意を払っていた輸入者にはお金が戻り始めており、中国仕入れの実効税率は10〜20ポイント下がり、日米15%合意は法的な足場を失い、次の体制には7月24日という明確な期限が付いています。
こうした局面で勝つセラーは、政策ニュースをオペレーション業務として処理する人です。IORを確認し、申請を出し、数字を引き直し、入荷時期を調整する。今週の2時間の事務作業が、前四半期のベストローンチより大きな金額を回収するかもしれません。
関税や政策の動きは、動きがあり次第YouTubeで解説しています。チャンネル登録しておけば、次の期限がリオーダーの真っ最中に不意打ちしてくることはありません。